あかとんぼの日





 やあい、よわむし。

 ほんの少し前まであかねは夕方の空が好きだった気がするのだ。でもすきときらいなんて、案外簡単にひっくり返ってしまうもんなんやな。体育倉庫の壁を背にして、ざらざらのコンクリートの感触だけを華奢でやわらかな背中にしみるように感じながら、あかねはそんなことを考えていた。およそ自分にはにあわないような小難しいことに思えるのに、その考えはみょうにすとんときて、あかねとしてはそれがなんだか気にさわってしようがない。
 でも、それもこれもあの子が小難しいせいなのである。そうに違いないのだと結論付けたら、そのままずるずると背を滑らせてコンクリートの床の上に尻をつくことだけは回避できた。西日がさすとこのへんはずいぶん冷たなるからな。その一言にはひじょうに実感がこもっていて、なぜってあかねは夕方ともなればほぼ毎日のようにあのサッカー部のエースと、練習で熱っぽくなった体には最高の休憩場所であるここを奪い合いしているのだ。
 しかし今日はその限りではない。だから今日の夕方は、きらいだ。さきほどあかねの思考のうちに出てきたふたり、つまりは小難しい子とサッカー部のエースが、この体育倉庫の壁一つ隔てた向こうでは顔をつっつきあわせている。それは女子サッカー部の試合の前日ともなれば毎度訪れる恒例行事であったから、べつにあかねでなくたって今日は体育倉庫に近寄らないようにするであろうことは明白だった。
 だっていろんなことに気が付いてないのなんて、中にいるなおとれいかのふたりだけなのだ、いつも。

「それじゃあ……なお、明日の試合、がんばってくださいね」
「うん。いつもありがとう、れいか」

 そしてほぼあかねの予想どおりの言葉が、けっきょく今日も今までと同じような言葉が、中ではかわされた。なんて、中のふたりは思っとるんやろな。床に尻こそつかなかったものの、しゃがみこむ姿勢までは妥協して、あかねは自分の膝の上にほおづえをつく。そうするとあかねの息は両足で圧迫された肺やら胸やらのせいでどうしたって浅くなるのであり、でもだからこそあかねはほとんどため息のようであった自分の呼吸に、必死で違う名前を付けることができたのだった。
 どうせ今日だって明日だっていつだってこれまでもこれからもずっとかわらないって思っとるんやろ。だけどあかねは背中にしみた冷たさと同じようにしてようく知っていた。おまもりを渡してから、れいかの一言、いつもの一言を言うまでが、だんだんと、だんだんと、長くなってきていること。幼なじみのふたりが試合前日にこうしてお守りを交換していることなら誰もが知っていて、だけどこれだけはあかねしか知らないと断言できることだった。それはもちろん中のふたりを含めての話、である。
 れいかは何も変わらず続きの一言を、頑張ってくださいねの一言を言えていると思っていて、なおは何も変わらずれいかとやり取りを交わせていると思っているのだ。お守りがあるんですというれいかの言葉にほんとうの続きがあることは、あかねしか知らない。あほらし。あかねが今度こそ長いため息をついてしまったとき、西のほうではじょうだんみたいに綺麗ででっかい夕陽が沈んでいくところだった。夕焼けが綺麗な日の次の日は、晴れになるんですよ。そんなふうに、今日のうちに明日のことを楽しみにできるって、ちょっとすてきなことだと思いませんか。
 どうしてもよみがえってしまった声は消すことができない。違うところで響いている現実の声と混ざってへんな和音になる。こういうのなんていうんやったっけ。いつかれいかに聞いてみようかとこころのどこかで思ってしまっている自分が、あかねはもっとも気にさわるのだった。でもまあとにかく明日は晴れるということなのだし、そしたらなおがれいかに持ち帰ってくる試合結果なんて、決まりきっているようなものだ。

「ああほんま、あほらし」

 出てきたらなおには絶対背中からドロップキックをかましてやろう。そう決心してあかねは立ち上がって、ちっぽけなひざこぞうをぱんぱんと叩いたのだった。


 しかしなんというか、あほらしいことはこれだけでは終わらなかったのである。
 今日の夕焼けはほんま悪夢や。あかねは思わずそうさけびたくなるのをぐっとこらえて、下駄箱あたりの床にちょこんと鎮座している、ちょっと困ってしまうほどに見覚えのあるものを拾い上げた。ようは、くだんのお守りである。ふたりもおったんに、どっちか気づかんかったんかいな。おそらくは貰ったばかりでまだつけてもいなかったからというのが正しいのであろうが、そうなると家に帰って弟妹たちの目を逃れてこっそりと、ていねいにていねいにお守りをつけている親友の背中が思い浮かんだので、あかねは深く考えるのをやめた。
 まあ、なおの家だってちゃんと知っているわけだし、今から行けば間に合うだろう。別にここに置いておいたってなおのことだから戻ってきて探しそうだが、今から歩きだせば途中でちゃんと出会いそうだし。あかねは履き替えた靴の爪先をとんとんと叩きながらそう結論付けて、とりあえずなおの家に向かって歩き出した。ほんのしばらくでもそれを手に握れることが嬉しいと思ったのは、なかったことにしてしまおう。

「おわ。これ手作りやん、れいかってほんま器用なんやなー」

 今まで遠目でしか見たことがなかったので、手に取って見て初めて、それがこのよにただひとつのものであることを知った。こりゃなおのやつ、血相変えて探しに来よんで。姉御肌のよくにあう親友のそんな様子を思い浮かべるとちょっとおかしくなって、あかねはぼんやりと自分の名前と同じ色に染まる道を、ぽんぽんとお守りを放りながら帰った。なおはこんならんぼうな扱いかたなんてぜったいせえへんのやろな。そう思うともうちょっと笑える。
 緑の生地の上になおの似顔絵らしいものと、非常に整った行書体の必勝祈願という文字の刺繍が並んでいて、紐まで淡いグリーンで合わせてあるのがまめなれいからしかった。緑、濃い緑、肌色、黄色、黒。あかねはいつのまにかぽん、ぽん、と角度を変えて飛ぶそれを、自分の足元がおぼつかなくなるくらいにしっかりと見て、色をひとつひとつ裏まできっちり確認していた。なぜそんなことをしているのかはよく知っていて、だから知りたくなかった。こんなときでもちゃんと、これを縫っていた時のあの繊細そうなゆびさきをふと思い浮かべて、今の自分のそれと薄く重ねてみたりしているのだから、どうしようもなく知りたくなかった。

「……どっか一本くらい混ぜこんどっても、気づかんやろ、あのにぶちんなら」

 青い糸、どっかに一本、くらい。あればいいのに、とちょっと誇っているほど健康な目をこらしてはみるものの、お守りのどこにも、そんなものは見つかってくれない。いやいやもしかしたら裏地が実は青でしたとか。それなら日に透かして見れば見えるはず。今度は自分をわらってしまうほどあかねはがんばってそのできれば見つからないほうがいいものを探していたわけで、ただとにかく今日のあかねはあまりついていないのだった。

「あ……っ、おーい、あかね!」
「うぇ!?」

 あ、うちのアホ。さすがバレー部のエース候補やんなぁなんてちょっとほれぼれしてしまうほどの素早さでお守りを背に隠してから、あかねはこころの中で絶叫していた。いやいやいやいや、なんでなおにお守り返しに来て、なおがやってきたらお守り隠しとんねん。アホか。アホちゃうか。もう怒涛のようなツッコミである。しかし内心の話である。つまりあかねの勝手な口のほうは、おうそんなにあわててどうしたんやなお、なんて気楽なことをのたまっている。アホちゃうか!

「その……えっとこう、緑色で、必勝祈願って書いてあった、すっごい出来のいいお守り! 知らない!?」
「……出来のいいまでは要ったんかな」
「え、なに? な、何か知ってるなら教えて! あれ、大切なものなんだ!」
「近い、近いてなお……っ、し、知らん! そないなもん、知らん!」

 いやいやいやいや知っとるし。口とこころのパイプあたりに鏡を置いたのはいったい誰だ。しかしあかねの非常に簡潔かつわかりやすい回答を聞いたなおは、そうかあとあかねの目の前でがっくり肩を落としてしまっている。どうやら本当に限界突破な速度で走ってきたようで、女子サッカー部エースも形無しといってもいいほどなおはぜえぜえと浅い息をついているのだった。さっきの一言だって、ほんとうは大変な苦労をしてしぼりだしたのだろう。
 今更実は知ってましたなんて言えんよなっていやいやいや言えるわ全然言えるわ。あかねのツッコミは留まるところを知らず、しかし逆に言えばあかねの口が勝手に回るのも留まるところを知らない。うなだれたなおに向かって大切なもんなら早う見つかるとええななんて親友然とした優しい言葉までかけてやっている。うちもしかしたら詐欺師の才能とかあるん。恐ろしいことである。詐欺師よりも魔術師のほうがいい。片手に握りしめたお守りが、次に手を開いたときにはきっとなくなっていて、はい実はなおの鞄の中にありました、なんて展開だったらいい。

「はぁ……あれっ? そういえばあかねん家ってこっちの方じゃないよね? どうしたの、今日は」
「へ……っ、あ、あー、ほら、なおがよぉ買い物に行っとるやっすいスーパーあるやろ? えとっ、今日はあそこちょっと覗いてから帰ろかなー思てん!」
「あ、そうなんだ。あんまり遅くならないように注意しなよ。じゃ、あたし学校探してくるから!」

 だけどそんなことは起きなくて、マジックのつかいかたなんてあかねはついぞしらなくって、たったっとランニングなんかよりずっとずっと速く駆けていく背中がもう絶対に見えなくなってからこわごわ手をひらくと、すこししわになってしまったお守りが、中には入っているのだった。

「……アホぉ」

 あかねはそれを制服のポケットにぐいっと突っ込んで、頭の中でできるかぎり正確な地図を描く。うちかて転校生やのに、このあたりの地理なんてまだよぉ知らんのに、なんでこないなことせなかあんのって、でもあかねの鼻の奥がぎゅうぎゅう痛んだのは、そんな理由ではなかった。

「なおのアホ、うちの心配なんか、すな!!」



 結果的にたくさん遠回りしたうえに走るはめになったあかねは、さっきのなおよりもずっと疲れきって家にたどり着くことになってしまった。家族みんなに体調を心配されたけれど、それにひとつひとつ答えるエネルギーはあかねの体にしろこころにしろ残されておらず、とにかくまっすぐ部屋のベッドに倒れ込むことしかあかねの頭にはなかったのだ。ただそのまま眠れたならよかったのにと思う。そのまま眠れたなら、いまごろどこを探しているんだろうなんてどうしようもないこと、きっと考えずにすんだだろうから。
 それでもポケットにはお守りが入っているのだ。汗がにじみはじめているそれを脱ぎすてるようにして、お守りだけをぷらんと目の前に下げる。なんとなく横目でカレンダーを確認した。バレー部の試合はあと二週間は先だ。それまで持っとったら、なお、怒るやろか。そういう問題ではないのにとうった寝返りで、血の巡りが良すぎるほどよくなった脳がぐらんと揺れる。
 頼めばきっとれいかは、あかねのぶんのお守りだって作ってくれると思うのだ。すこし不思議そうな顔くらいはするかもしれないけれど、基本的に面倒見のいいれいかだ。それになにより自分たちはちょっと不思議な縁でも結ばれた仲間である、断るなんてことはありえないだろう。もしかしなくたってなおでもそれを歓迎してくれると思う。でも、だから、それだけはいやだった。そうじゃないのだ。あかねが欲しいのは、そんなものではないのだ。
 それは試合がんばってくださいねあかねさんという言葉でも、ありがとなれいかって返す自分の姿でも、とにかく、とにかく、そうじゃなくって。

「……うちが欲しいんは、」

 今手の中にあるものは、あかねの欲しいものにいちばん近くて、けれどいちばん、遠かった。
 でももう、そんなんええか。れいかなら同じもの作るくらい簡単なことやろうし、いちばん近いならべつにそれでええし。なんだかんだ言ってどうしてもお守りはかわいい。ひとはり、ひとはり。あの子の手で。とても綺麗な手で。れいかは手先は器用そうやけど、どっちかっていうとていねいってイメージやしな。さっき簡単に作れるなんて言っていたわりにあかねはそんなことを考えてしまう。けれどもう矛盾だとかそういう小難しい言葉は、あかねとしてはたくさんな気分だったのだ。
 しかしなかなかどうして、すきというやつは、その鋭敏すぎる感情は、ほんとうに御しきれないほどめんどくさいもので。

「うん?」

 初めはなにか見間違いなのかと思ったが、先にも述べたようにあかねは自分の視力にそれなりに自信を持っているのだ。ベッドからがばりと体を起こすに、その違和感は十分な材料たりえた。いくつか取れないしわが残ってしまったそれを、あかねは部屋の灯りに照らしてためつすがめつして見る。表、裏――さかさま。

「なんや……?」

 お守りの中身をのぞいてはいけない。それは誰か忘れたけれど大人が教えてくれたことで、ごくごく小さい頃に言い聞かせられたそういうことはなぜだか子どもはきっちりと守ってしまうものだ。あかねだってそうだったから、なんとなくためらわれはしたけれど、指先にかかった紐はちょっとあっけないほど簡単に解けた。中には綿らしきものがちょっとだけ詰めてあって、しかしのぞいたのはこれではない。
 二度目はもうためらわなかった。あかねは指先で綿をひっぱり出して、中身を確認しようとお守りを逆さに覗き込む。

「うわっ! と!?」

 と、そんなあかね自慢の目が、ふわっと一瞬にして青色に染まった。
 ついにれいかの呪いがきたかなんて考えてしまった自分がばかばかしくって、でもれいかにだったら別に呪われてもええなあなんて思ってしまう自分はもっともっとばかばかしかった。あかねはおそるおそる手でそれをつまんでみる。薄っぺらい手触りがなんだかたよりなくて、さっきまでのお守りの扱いとは打って変わって、かなり丁重にあかねはそれを拾い上げた。

「……押し花、か、これ?」

 作ったことがあるわけではないから、確信は持てなかったが。うすい透明なカバーの中に、乾燥した花びらがたった一枚だけ入っている。その花びらがもっと知らないものであったならあかねはそのまま首をかしげただけでお守りの中に戻していたかもしれないのだが、しかしあかねはそのちょっと有名な花びらに、しかも非常に見覚えがあった。
 れいかちゃんって毎朝お花にお水をあげてるんだよ、誰に頼まれたわけじゃないのにすごいよね。みゆきが嬉しそうに報告してきたその言葉に、あかねは鼻高々になりそうなのをおさえながら、うちそんなん知っとるで、と返したことがあった。だってあかねはそれだけじゃなくてれいかが苗木をその花壇に植えていたことだって、中でもれいかがいちばん好きな花のことだってしているのだ。

「パンジー、」

 だからあっという間にその花の名前はひらめいて、

「……は、はぁ、なるほどなぁ」

 その答えはするりと、あかねがおよそ届きたくなかった結論まで、手を伸ばしてしまう。

「はは……わっかりにくいわぁ、れいか」

 こんなん、あいつ、ぜったい気づかんで。それこそあんたが、お守りがあるんです、の続きに、中も見てみてくださいねなんて気の利いた一言でも付け加えない限りは。コンマ二秒長くなっていく沈黙は、でも、いつかそこまで届くのだろう。
 でも先に気が付いたのは、うちや。腕を両目の上にあてて、パンジーの押し花を手のひらからぽとりと落としたあかねは、ちょっとだけ笑ってみる。こんなん、気づかれるわけないやん、れいか。気づくとしたら、そいつは相当の馬鹿にちがいない。

「――わたしをおもってください、ってな」

 そしてあかねは残念ながら、間違いなくその、相当の馬鹿の頂点に立っているのだった。



 次の日はちょっとくやしいくらいに快晴だった。土砂降りだったら良かったのにって一瞬でも考えてしまったあかねは往生際がわるい自分に腹が立ったのだけれど、ひきょうさに腹を立てるよりはいくぶん気持ちのいいいらいらのしかたではある。もっとも詳しいことははっきりわからなかったが、ともあれ昨日の帰り道よりはずっと、あかねの足は軽かった。ほんのちょっと寝坊(という名の強情っぱり)をしてしまったので、間に合うかどうかはわからないが。まあ、ヒーローは遅れてやってくるもんやしな。とりあえずそういうことにしておく。
 そうしてあかねは目的地である隣町の中学校までたどり着いた。まるで計ったようにロスタイムである。そしてまるで計算したかのように点数は三対三で、いいかここががんばりどきだ最後の円陣なんて組んでいるようなときである。まったくもってあほらしいが、どうせなら最後まであほらしくあればいいのだ。あかねは持ち前の身軽さでフェンスをひょいと飛び越えて、グラウンドを真っ直ぐ駆けていく。

「えっ……あ、あかねさん!?」
 
 先にれいかが声を掛けてくれた。たったそれだけのことで、あかねのお腹には、多分に追いつめられた表情で汗をぐっとぬぐう、こにくらしい大親友に向かって叫ぶ力が、ほんとうにあほらしいことにぐっとたまるのだ。

「なおっ!! 受け取りぃ!!」
「へっ……と、」
「ほらほら、なにへばっとんの、シャキッとしぃや!」

「……っ!!」

 ああほんとにシャキッとしよってからに、たく、単純すぎや、どいつもこいつも。あかねやれいかのいるコートから少し離れているはずの応援席から見ていたってなおの背筋が突然ぴんと伸びたことは目に見えてわかるのであり、いっそ敵チームがかわいそうになってくる。どうやらとんでもない怪物をよびおこしてしまったようやな。ちょっとかっこつけたことを考えてみたりするも、これからなおがするであろう活躍のことを考えると、あながちその言い方も間違いではなさそうなのだった。
 そしてそれはほんの数秒もしないうちに現実のものとなる。いったいどこにそんな力が残っていたんだと敵チームの補欠も合わせて十五人全員が今にも悲鳴を上げそうなようすだなんて、なかなかどうして突き抜けていっそ爽快な見応えであり、あかねの隣で祈るようにぎゅっと組まれていたれいかの手からだんだんと力が抜けていく。冗談みたいに決まった顔のなおが一人また一人とディフェンダーを振りほどく。
 そうしてきらきらした目線がゴールを射抜いたその瞬間、なおの足がほれぼれしてしまうほど綺麗にしなって、彼女の性格そのままに真っ直ぐすぎるボールを、ゴールネットに突き刺した。

「……っし!」

 そうしてくるっとこちらを振り返ったなおは、誰でもないたったひとりに向かって、思いっきりガッツポーズを掲げてみせた。
 くっそう、かっこいい。と思って隣を見れば、ずっと立ち上がったまま緊張で身を固めていたはずのその子は、今は飛び跳ねたいのを必死にこらえているかのようなふるえた爪先立ちをしていて、

「はー、あっほらし。」

 あかねはそのれいかの笑顔が、やっぱり最高にかわいいなあ、なんて、思ってしまうのだった。

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